イラク国境油田、占拠のイラン軍撤退で緊張はいったん緩和

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 イラン・イラク国境にあるファッカ油田にイラン軍が侵入した事件は、イラン軍が20日、占拠した油井から撤退したことで、当面の危機は回避された。ただ、両国が同油田を自国の領土の一部だと主張していることに変わりはなく、国境紛争の火種は残されたままだ。外資導入による石油開発を進めているイラクにとっては、今後の海外企業誘致の障害となりかねない。

 ファッカ油田は、イラクの首都バグダッドから南東約320キロのイラン国境付近に位置し、原油埋蔵量は15億バレルといわれる。

 イラクからの報道によると、18日午後、イラン軍の兵士11人が国境を越えてイラクに侵入。同油田4号油井にイラン国旗を立てて占拠した。イラク政府報道官は同日、「主権侵害だ」とイランを非難、即時撤退を求めた。

 これに対してイランは当初、「どの油田も占拠していない」と反論。19日にはイラン軍が声明で占拠を認め、「ファッカ油田はイラン領土だ」と、主権侵害ではないと強調した。

 その後、イラクはファッカ油田付近に治安部隊を派遣して警備を増強し、一時、緊張が高まったが、両国外相が国境間の協定について話し合う必要があることで一致した。イラン兵は、20日朝までに4号油井から撤退し、イラン側へ約50メートル後退した。

 ファッカ油田は、イラクが今年6月に実施した開発権に関する国際入札の対象案件のひとつだった。落札企業はなかったものの、イランから見れば自国の油田をイラクが勝手に入札にかけていたことになり、そのことへの反発が今回の占拠につながったとみられる。

 ただ、イランの行動について米軍制服組トップのマレン統合参謀本部議長は20日、「周辺国を脅かそうという(イラン政権による)組織的な計画の一部ではない」との見方を示しており、あくまでもイラクに対する牽制(けんせい)だった可能性が高い。

 一方、イラク政府は20日、石油大手ロイヤル・ダッチ・シェルなどと、今月11日の国際入札で落札された同国最大級の南部マジュヌーン油田(埋蔵量126億バレル)の開発に関する契約に仮調印した。週内には別の6油田の仮調印が控えており、イランがこのタイミングを狙った可能性もある。

 事件を受けて石油省高官は「国境で起きたことは(契約には)何の関係もない」と述べるなど、国境紛争がイラクの石油開発に悪影響を及ぼすことへの懸念払拭(ふっしょく)に追われている。(大内清)
12月21日18時25分配信 産経新聞
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