大阪から見えるイラク/37止 国を越え心つながる上映会 /大阪


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↑日本から届いた寄せ書きにはアラビア文字で「平和の花を咲かせましょう」と書かれていた=アルビルで07年

 ◇笑いで泣かせたオカンの力
 07年、東大阪市の意岐部東(おきべひがし)小学校6年生(当時)はイラクの同世代を励ますため、メッセージビデオを作成した。テープを託された私は、イラク北部アルビルのジャワヘリ小学校で上映会を開いた。ここには治安悪化の都市部から避難してきた子どもたちが通う。

 「大阪名物お好み焼き!」。男子児童が自ら撮影したビデオ映像には、台所で背中を丸め、ものすごい速さでキャベツを千切りするお母さんが出てきた。材料を手際よく混ぜると、ホットプレートの上でジューッと焼いていく。その姿に「ショーを見ているようだ」とイラクの子どもは目をぱちくり。「あれはハンバーガー?」。モハメッド君の問いに、「大阪のスペシャルピザよ」と私が答えると、「食べたい!」の大合唱だ。

 次に、お父さんとお母さんはそれぞれのジョッキにビールを注ぎはじめた。「カンパ〜イ」の声とともにグイーッと飲んだのは、お母さんだった。イスラム教徒の多いイラクでは、お父さんでさえもこっそり晩酌する。大阪のお母さんの豪快な飲みっぷりに、「カッコイイ!」とスタンディングオベーションが巻き起こった。

 中には、笑いすぎておなかを抱えて涙を流す子もいた。その姿に私は涙があふれてきた。これまでイラクで悲しみに泣く人を見てきたが、笑いすぎで泣くのを見たのは初めてだったのだ。
 最後の映像は、教室での授業風景で、イラクの現状を学んだ6年生が意見を出し合っていた。一人の女子児童が、真剣な表情で言った。「イラクには戦争があるけど、日本にはいじめや自殺があります」。ドゥニャさんは驚いた。「イラク人はつらくても自殺なんかしない。日本も大変な国なんだ……」

 上映後、子どもたちの手が次々に挙がった。「遠い国の小学生が僕たちのことを思ってくれるなんて、勇気がわいた」(アナス君)。「今はつらいけど、未来をつくるのは私たち。手をつないでいきたいな」(ゼイネップさん)……。

 その様子を収めた映像を、帰国後、意岐部東小の6年生に見せると、「国なんか飛び越えて心がつながった。いつまでも友だちだよ」の思いをひとつにしていた。

 給食の時間、イラクの調味料の棗椰子ソースをみんなで試食した。薄茶色の少しすっぱいイラクのソース。おかずにかけると結構いけた。「いつの日か会おうね」。児童たちに笑みがこぼれた。

コメント:玉本英子さんのイラクについての記事が今回で終了になってしまう模様です。とても勉強になる記事をいつもありがとうございました。この場をお借りし御礼申し上げます。長い間、お疲れ様でした。
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