【日々是世界 国際情勢分析】イラク治安悪化 展望開けぬマリキ首相

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 駐留米軍が都市部から撤退したイラクで、8月の武装勢力の攻撃などによる死者が400人を超し、一時は回復した治安が再び悪化する兆しをみせている。武装勢力の狙いは、宗派間抗争を再燃させ、社会を不安定化させることだとみられる。治安悪化は、来年1月の連邦議会選を前に治安回復をアピールしたいヌーリ・カメル・マリキ首相(59)が、準備不足のまま米軍撤退を急いだのが原因との見方も出ており、マリキ首相の一層の求心力低下は避けられそうもない。

 8月19日、首都バグダッドの外務省と財務省近くで、2台のトラックが相次いで爆発、計95人が死亡、1200人以上が負傷した。いずれの現場も警備が厳重な旧米軍管理地域(グリーンゾーン)に近く、6月末の米軍の都市部撤退後では最悪の被害となった。

 このテロをめぐっては、イラク当局が、サダム・フセイン元大統領が率いたスンニ派中心の旧バース党出身者の「自白ビデオ」を公開したほか、国際テロ組織アルカーイダ系のスンニ派武装勢力イラクイスラム国」が犯行声明を出すなど、不明な点が多い。

 ただ、狙われた外務省はクルド人が、財務省シーア派イラクイスラム最高評議会が、それぞれ強い影響力を持っており、19日付英紙タイムズ電子版は「(2006年から07年にかけての)宗派対立を再燃させようとするアルカーイダ系のスンニ派イスラム主義武装組織と同様の戦術」だと指摘している。

 マリキ首相が8月に入り、テロ防止用にバグダッド市内各所に設置された防護壁の撤去を開始、治安改善を目に見える形で示そうとした矢先だっただけに、政権への衝撃も大きい。

 22、23日付の国際紙インターナショナル・ヘラルド・トリビューンは「(19日のテロは)イラクは米国の手助けなしに身を守る準備ができているとするマリキ氏の主張を深く傷つけた」と伝えた。マリキ首相は事件後、防護壁撤去の中止を命じたという。

 治安改善のめどが立たないことで、イラク国民の政府に対する不満は急速に高まっている。

 マリキ首相率いるダアワ党は24日、連邦議会の最大勢力でシーア派統一会派「統一イラク同盟」からの脱退を発表。連邦議会選に向けて党派横断的に新勢力結集を目指すとしているが、求心力回復への展望は開けていない。

コメント:テロを防ぐ根本的な対策が必要だと思います。国家レベルで臨む対策であればテロにも効果があるのではないでしょうか?
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